わたしの父は、たぶんもうダメだという話。

今回は、ひとつ
『わたしの父』のお話をしましょう。

わたしの父は、
たぶん
もうダメだと思います。

断酒することなく
死んでいくんだろうなと
思います。

お酒でさんざん、
家族を傷つけてきた人でした。

けれど、
『記憶がない』と言うのです。

あの
恐ろしかった日々を、

『そんなことがあったのか?』
と言うのです。

はじめは、
『演技をしているのかな?』

『ウソをついているのかな?』
と思いました。

でも、
ひょっとすると、
『本当に覚えていない』
のかもしれない。

長年のお酒の作用で、

現実と妄想、
思い込みとウソ

それらが
頭の中でグルグルになって、
こんがらがって、

このひとはもう、
『ワケがわからないこと』に
なっているんじゃないかと。

『アルコール性認知症』って、
こういうふうになること
なのかな?

とか思ったりして。

わたしは悲しい。

わたしの父は、
ほんとうは
『こんな人』ではなかったハズだ。

小さいころは
よく遊んでくれて、

そんな写真が何枚か残っている。

ところが、
どこかの時点で、

酒を飲んで
『暴れ狂う父』になってしまったのだ。

わたしが
8歳くらいで

父が35歳くらいだったと思う。

住宅ローンで建てた
新しい家に
住み始めてから

そこからが
スタートで、

わたしが家を出るまでの
約20年間が

地獄のように恐ろしくて
悲しい記憶になっている。

それまでの父は、
やさしくて
穏やかな人だった。

17時過ぎには
家に帰ってきて、

夕食前まで
いつも遊んでくれていたと思う。

わたしは
そんな父が大好きだった。

だけど父は、

新しい家に
引っ越したあたりから、

ある日突然、
怒り狂うようになっていった。

父は
たくさんの酒を飲んでいた。

それは、
いつ爆発するかわからない
爆弾のようだった。

あれから何十年もたった。

わたしは40歳を
とうの昔に過ぎた。

そして父は

今もなお
飲み続けている。

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父はあるとき、
突然倒れて

大きな傷のできる
大手術をしたこともあった。

切り取られた
父の内臓の一部は、

壊死していて、

あんなオソロシイことになっている
自分の内臓を
見せられたのに、

ソレを忘れるためかのように、
酒を飲み続けている。

母は父に
『もう酒をやめて!』と
いつも言っていた。

だけど
その言葉は
父の心へは届かなかった。

わたしは、
母の選んだ言葉は
間違っていたと思っている。

母は、
あなたのカラダが心配で、
『わたしは悲しい』と
言えばよかったのだ。

母はどうして、
父に、
『あなたはわたしの大切なひとだから、
失いたくない』と

素直に
言わないのだろうか。

父を責める
言葉のかずかず。

だから父も
母を責める。

酒を飲んで、
メチャクチャになる。

瀕死の状態で
病院にかつがれた
意識のない父に向って、

母は
『お父さん、いかないで!』と
あの時言って、泣いたのに。

最後だとわかっていたなら

どうしてそれを、
かろうじて命を取り留めた父に
言ってあげないのだろうか。

父は、
自分のことを
『愛されていない』と思い込んでいる。

父は、
『愛されたい』のに、

これまた
素直じゃないから、

それをクチに出さない。

母に愛されたいのならば、
自分から先に
『愛している』と伝えればいいのだ。

『いつもありがとう』と
伝えればいいのだ。

そうしたら
母は何と答えますか?

『大嫌いだ!』
『気持ち悪いからあっちにいって!』

とか父に
言いますか?

言いませんよね。

『わたしのほうこそ』
とか言って、

うれしくて
泣いたりしませんか?

だから父は、
言葉にして、
伝えればよかったのだ。

いろいろ
モヤモヤ考えず、

勘ぐらず、

傷つくことを
恐れずに、

気持ちを
ストレートに
伝えればよかったのだ。

クチに出して言えないのならば、

手紙を書くとか
なんとか

あったでしょうと。

それを、
なんだかややこしい
ワケのわからない表現をして、

自分が傷つかないように
細心の注意をしながら、

遠回しに
母の気を引こうとする。

自分の本当の気持ちは
言葉にして伝えず

なんだか知らないけれど、
半信半疑で
いつも母を疑っている。

だから
嫉妬深く見えるし、

そんなことばかり
考えているから、

酒を飲むと
母にからんでしまい、

『俺のことをわかってくれない!!』
とか

『俺が本当のことを言ったら
悪いんか!!』
とか言って暴れ、

勝手に突然
激怒するハメになるのだ。

父よ、
それは『違う』でしょうと。

そういう『気持ち』は、
おさえこまず、

普段から
小出しにしておかなくては。

わかってほしいのならば、
ふだんから言葉にして、

『気持ちを伝えておく』必要が
あるのだ。

伝えなければ、
誰もわかってくれないのだ。

わかりようがないのだ。

父は、
母がいないと
生きていけない男だ。

なのに、
酒を飲んで
酔っぱらって暴言をはく。

ギリギリのところまで
母を追い詰めるのだ。

そして母が本当に
家を出ていったら
『愛されていない』ということ。

出ていかなかったら、
『愛されているのかもしれない』
ということ。

まだ
大丈夫なのか、

そうやって
母を試すんだよね。

なんてことだ!

OH!マイガー!だ。

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父よ、
どうして、
そんなややこしい
かけ引きをしようとするのだ。

言葉にあらわせ
『ことば』に。

自分の気持ちを
『言葉』にあらわすのだ。

言葉にしなければ、

『相手』には
永遠に伝わらないのだ。

『言わなくてもわかるだろう?』って

そんなの
テレパシーじゃあるまいし、

わかるワケがないのだ。

だって、
母の本当の気持ち

父よ、あなた、
わかっていますか?と。

言葉で聞いていないから、
『わからない』んだよねと。

だから
すれ違ってしまうし、
たくさんの誤解が生まれるのだ。

言葉で伝えていないのに
『理解しろ』というのは

自分本位で
都合のいい

おかしな話なのだ。

ああ
なんということだろう。

わたしの父は、
長いことお酒を飲んできて、

そういうことが
『もうできない』ヒトに
なっちまった。

わたしはそれが
とても残念でならない。

父は酒をやめない。

ぜったいにやめない。

ワケのわからない理由を
並べ立て、

『断酒』の『だ』の字もクチにしない。

だから
残念だけれど、

『自分を変えるチャンス』は
もう訪れない。

父は
あのままのヒトだということ。

この人生で、
ずーっと
『ああいう人』だということ。

友達も
ずいぶん失くしたようだ。

酔って暴れて
暴言を吐くんだから、

そりゃー
たまりませんよね。

『一緒に飲みたい』と
思うハズないでしょうと。

だけど父は
さびしがり屋だ。

じつは
人恋しいひとだ。

なんということだろう

酒を飲まなければ、
会ってくれる人は

たくさんいるというのに。

いつも
酒を飲んでクダを巻くから、

『あのひとはムツカシイひとだ』と
『やっかいなヒト』だと

言われているのです。

気づいてくれないかな
気づいてほしいな

『断酒すると
人生は開けますよ』

娘のわたしが言っています。

なんと
娘のほうが
お先に断酒いたしました。

もう7年になります。

父は
『つまらないなぁ』という顔をして
ビールを飲みながら
わたしの顔を見ます。

お父さんが言っていた
『酒を飲まないと、楽しくないから』は

『大間違い』でした。

でも
どんなに伝えても、

父の耳には
入りません。

伝え方を変えても、
ことばの表現を変えても、

父の耳には
入りません。
届きません。

たぶん
一生届きません。

だって父は
誰の言葉も
『聞こうとしない』から。

自分は正しくて、
ヒトは間違っていると

耳にフタをしているから。

自分を賞賛する言葉しか
受け入れないから。

だから父は
『自分で気づくしかない』のです。

自分を救えるのは、
『自分だけ』なのです。

だから、
『このままの父』ならば、

行くところまで
行ってしまうのだろうなと。

ふと思うことがある。

カンオケに、
愛用のカップと、

酒やツマミを
いっぱいいれて
見送ることになるのかなと。

そうなるのかなと。

最期まで
飲んでたよねぇと

飲まなければ
ほんとうに
いいヒトだったのにねぇと

そういふうに
惜しまれて

ということに
なるのかなと。

父はそれで
幸せなのだろうかと。

心穏やかに、

父には
幸せになってほしかったなぁと。

でもやっぱり、
それはむつかしいのかな。

『本当の幸せ』を知らないまま、
酔って倒れて、

人生が終わっていくのかもしれない。

それではまた。

どういう人生であっても、

『命』は、ある日突然
『終わる』から、

『断酒』に気づいたわたしたちは、

今日も後悔のない
いちにちにしようね。

追記:

ある日突然、大切な人を
失うことがあるから、
大切な人には、日ごろから
『大切だよ』と伝えておこうね。

後悔しても、
『時間はもとに戻せないよ』という
こころが揺さぶられる詩集です。
初めて読んだ時、泣きました。
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