卒酒976日目 アルコールは体に悪い③ 父の入院と胆のう(3)

昨日の続きです。

父の手術は
6時間にも及んだ。

酸素マスクをして
手術室から出てきた意識のない父を見て、
母は小走りでかけていき、
『お父さん。お父さん』と
何度も呼んだ。

その後、
わたしと母は
先生から呼ばれ、

シャーレにひろげられた、
『黒ずんだもの』を見せられた。

『これは、胆のうです。
お父さんの胆のうは、
このように反対側が痛んでいて、
そこから破裂し、
胆汁が腹部全体へ
漏れ出していました。』

そして、当初は
原因を探るべく
内視鏡手術を試みたが、

腹水でおなかが
パンパンに膨れ上がっており、、
腹膜炎で危険な状態にあったので、
緊急の開腹手術に踏み切ったのだと
説明してくれた。

また、
腹部全体に広がった胆汁は、
すべての臓器を
『汚染』していたため
洗浄しなければならず、
それで手術時間が大幅に伸びたのだ
ということも説明してくれた。

幸いにも
他の臓器は損傷しておらず
懸念していた『すい臓』も無事だった。

なお、検査の際、
CT等の画像で『正常』となり、
原因がつかめなかった理由としては、

『胆のう』が
いろんな臓器の『裏側』にあり、
また、今回破裂した箇所が、
その『胆のうの裏側』にあったから、
映像に出なかったんだろう
とのことだった。

そして、先生は最後に、
この手術が
あと30分でも遅れたなら、
『命はなかっただろう』と言った。

父は、
成人してから程なく
酒を飲み始め、
それから何十年も、
お酒を飲み続けてきた。

このため
かかりつけの医師からは、
せめて
『週に一日は休肝日を設けるように』
と指導されていた。

今こそ
標準に近い体型だが、
定年退職するまでは
『肥満体型』だった。

ずっとコレステロール値が高く、
『2型糖尿病の境界線』を
行ったり来たり、
ということが25年近くも続いている。

『節酒』も、
医師から指導されていたが、
どうにもこうにも『習慣』で、
晩酌から寝酒まで
ひととおり飲まないと気が済まない。
一日が終わらないようだった。

父は今回のことで、
『胆のう』を失ったが、
命を取り留めることができた。

しかし、
果たして、
これで『全てが終わった』
と言えるのだろうか。
わたしの頭に不安がよぎった。

なぜならば、
あのシャーレへ広げられた
『胆のうの黒ずみ』
内臓が傷んだ所から、
『裂けて破裂した』と明らかにわかるものだった。

それが、
なぜ、
『胆のうだけ』に
発生するものだと言えるだろうか。

アルコールは、
飲酒の都度、
血管を収縮させ、
また、その血管を通して
あらゆる内臓から脳へと広がり、
全身の体内へダメージを与えていく。

胃であれば、
『胃の粘膜』を
いとも簡単に突き破り、
赤く出血させる。

そして、
ほかの内臓へも同様に。

長年の飲酒が、
痛みの自覚のないまま、
かけがえのない内臓を
痛め続けてきたという事実。

わたしは、
父の、
あの『痛みに、のたうちまわる
苦しみよう』を目の当たりにして、

『かわいそう』だとか、
『どうにかしてあげたい』
『助けてあげたい』

そういった気持ちを
通り越して、

『内臓がついに悲鳴をあげる』
ということの
『恐ろしさ』を感じた。

父には、
『酒をやめてほしい』と、
心から願うが、

酒をやめるということは、
まわりがどんなに言っても、
コントロールできるものではなく、

本人があるとき、
いろんな意味でどん底に落ちてしまい、

『もう、こんなのは勘弁』だと、
心からこりないと、
成就しないと
わたしは強く思うので、

こればかりは
どうしようもならない。

父が、
『酒はもうこりごり』だと、
感じてくれることを
せつに願うまでだ。

しかし、
わたし自身は、
今回のことで、
自分の『卒酒の決意』は
『正解だった』と確信した。

たとえ、
まわりが何と言おうとも。

ワイドショーで、
花見に欠かせないアイテムが
『お酒』だと騒いでも。

『まずは、ビールでしょ』、
『大人なら焼酎だ』と
テレビのCMで
あたりまえのように流れていても。

『酒は体に悪い』

これは事実。
だから、
わたしは二度と酒を口にしない

心からそう思った。